概要は以下のとおりです。
◆はじめに
肺がんになる人が増え続けています。本日は、肺がんやその検査、治療についてお話しします。
◆肺の構造と働き
肺は、右が3つ、左が2つに分かれている臓器です。左右の肺の間に心臓や食道、大血管があります。
◆がんのできる仕組み
人間の体は約60兆個の細胞でできており、細胞は、毎日の分裂によって新しく生まれ変わります。正常な細胞がコピーされることで分裂しますが、たばこや紫外線などの危険因子によって遺伝子(細胞の設計図)に突然変異が起こり、コピーミスが起こることがあります。これが、がん細胞の発生です。がん細胞は発生したところで無制限に増殖し、ある程度大きな塊(腫瘤(しゅりゅう))になると、リンパや血液の流れに乗り、転移を起こします。コピーミスは若いときからありますが、免疫細胞ががんをやっつければ増殖しません。年を取ると、コピーミスが増え、免疫も低下するため、がんが増殖しやすくなります。
◆日本の肺がんの現状
日本人の主な死因は、
- 悪性新生物(悪性腫瘍):29%
- 心疾患:15%
- 肺炎:15%
- 脳血管疾患:9%…
の順です(2013年時点)。1位の悪性新生物での死亡率の内訳を見ると、肺がんは男性で1位、女性で2位の多さです。
◆京都の肺がんの現状
原因はよくわかりませんが、肺がんは男女とも北海道や近畿で多い傾向にあります。京都府は2013(平成25)年度の発生者数が全国9位となっており、発生頻度が高いことを示しています。肺がんの主な症状は、咳や痰・血痰、呼吸困難、体重減少・食欲低下、発熱、体の痛みなどです。
京都府の調査では、肺がんの発見経緯は、健診が14.2%、ほかの疾患の経過観察で判明するのが41.2%、自覚症状が44.7%です。発見できた時点ですでに肺がんが進行しているケースも多いため、対策が急がれます。
◆肺がんの原因
肺がんの主な原因は、喫煙です。指標として「喫煙指数」が用いられます。
喫煙指数 = 1日に吸うタバコの平均本数 × 喫煙年数
で、喫煙指数が400を超えると肺がんの危険が大きくなります。そのほか、アスベストや粉じんなども肺がん発生の原因となります。肺がんの遺伝は、ほとんどありませんが、がんになりやすい体質は遺伝します。
非喫煙者の肺がん発生リスクを1とした場合、現在喫煙中の人のリスクは4倍以上あります。しかし、禁煙に踏み切れば、リスクは減ります。禁煙期間9年でリスクは3倍に下がり、10〜19年では2倍を下回り、20年以上禁煙した人のリスクは非喫煙者と同じまで下がります
。
◆肺がんの検査
健診から確定検査、治療方針を決めるための検査は以下のとおりです。
◆肺がんを見つけるための検査
◆京都の肺がんの現状
原因はよくわかりませんが、肺がんは男女とも北海道や近畿で多い傾向にあります。京都府は2013(平成25)年度の発生者数が全国9位となっており、発生頻度が高いことを示しています。肺がんの主な症状は、咳や痰・血痰、呼吸困難、体重減少・食欲低下、発熱、体の痛みなどです。
京都府の調査では、肺がんの発見経緯は、健診が14.2%、ほかの疾患の経過観察で判明するのが41.2%、自覚症状が44.7%です。発見できた時点ですでに肺がんが進行しているケースも多いため、対策が急がれます。
◆肺がんの原因
肺がんの主な原因は、喫煙です。指標として「喫煙指数」が用いられます。
喫煙指数 = 1日に吸うタバコの平均本数 × 喫煙年数
で、喫煙指数が400を超えると肺がんの危険が大きくなります。そのほか、アスベストや粉じんなども肺がん発生の原因となります。肺がんの遺伝は、ほとんどありませんが、がんになりやすい体質は遺伝します。
非喫煙者の肺がん発生リスクを1とした場合、現在喫煙中の人のリスクは4倍以上あります。しかし、禁煙に踏み切れば、リスクは減ります。禁煙期間9年でリスクは3倍に下がり、10〜19年では2倍を下回り、20年以上禁煙した人のリスクは非喫煙者と同じまで下がります
。
◆肺がんの検査
健診から確定検査、治療方針を決めるための検査は以下のとおりです。
◆肺がんを見つけるための検査
- 胸部エックス線検査:
簡単に行えて、放射線の被爆量が少ないという利点があります。欠点は、腫瘍の大きさが約2cm以上ないとわからないことと、死角になる部分が存在することです。読影には経験が必要です。 - 喀痰細胞診:
ハイリスクな方は、エックス線とともに喀痰細胞診が行われます。これは、がん細胞が痰の中にはがれ落ちることがあるためで、3日間、できる限り早朝に採取した痰を検査します。肺がんのできる部位によっては見つかりにくいという欠点があります。
◆肺がんを確定するための検査
エックス線検査や喀痰細胞診などの結果、肺がんの疑いが強まった場合は、疑いがある部位から細胞を採取して、がん細胞の有無を確認します。気管支鏡検査やCTガイド下生検などがあります。
このほか、MRIやPET-CT、骨シンチグラフィーで肺がんの位置や性質を確認する方法もあります。
◆肺がんの病期
- I期(IA,IB):
がんが肺の中にとどまり、リンパ節に転移がない。 - II期(IIA,IIB):
がんと同じ側の肺門リンパ節に転移をしている。 - III期(IIIA,IIIB):
肺の周りの組織や主要な臓器に浸潤している。肺門、縦隔、首のリンパ節などに転移している。 - IV期:
反対側の肺に転移。胸水・心嚢水(しんのうすい)がたまる。ほかの臓器に転移を来している。
◆肺がんの治療
肺がんの治療方法は、がんの状態や体の状態によって選択します。がんの状態は、がんの組織型や病期、遺伝子変異でわかります。体の状態は、年齢や全身状態、心臓や肺・肝臓・腎臓の機能、ほかの病気(合併症)などで判断します。治療には、局所療法(手術や放射線治療)と全身療法(薬物療法)があります。
日本人の肺がんに多い非小細胞肺がんの場合、がんが一部に限局しているI期〜IIIA期では、手術または手術+術後補助化学療法、周囲の臓器に浸潤しているIIIA・IIIB期は放射線療法+化学療法、IV期は化学療法が選択されるケースが多いです。
◆肺がんの薬物療法(抗がん剤)
肺がんの化学療法は進化しています。現状では、完全にがんを治すのは難しいことが多いですが、がんの再発を遅らせたり、進行を遅らせたり、がんによる症状を抑えたりすることを目的に、新薬開発も盛んに行われています。近年は、分子標的薬の開発が盛んで、次々に新薬が登場しています。分子標的薬とは、がん細胞の増殖に関わる特定の分子(たんぱく、遺伝子)を狙い撃ちしてがんの増殖を抑える薬で、正常細胞は傷つけないという利点があります。半面、特定の分子をもたないがんには、ほとんど効果がありません。
今後も新薬が毎年のように登場します。最新の知見を取り入れ、その患者さまに適した治療を行っていきます。特殊な放射線治療や未承認の新薬など、紹介できることがあれば、他院とも連携して治療を行っていきます。
◆抗がん剤の副作用
以下のような副作用が出ることがあります。
肺がんの治療方法は、がんの状態や体の状態によって選択します。がんの状態は、がんの組織型や病期、遺伝子変異でわかります。体の状態は、年齢や全身状態、心臓や肺・肝臓・腎臓の機能、ほかの病気(合併症)などで判断します。治療には、局所療法(手術や放射線治療)と全身療法(薬物療法)があります。
日本人の肺がんに多い非小細胞肺がんの場合、がんが一部に限局しているI期〜IIIA期では、手術または手術+術後補助化学療法、周囲の臓器に浸潤しているIIIA・IIIB期は放射線療法+化学療法、IV期は化学療法が選択されるケースが多いです。
◆肺がんの薬物療法(抗がん剤)
肺がんの化学療法は進化しています。現状では、完全にがんを治すのは難しいことが多いですが、がんの再発を遅らせたり、進行を遅らせたり、がんによる症状を抑えたりすることを目的に、新薬開発も盛んに行われています。近年は、分子標的薬の開発が盛んで、次々に新薬が登場しています。分子標的薬とは、がん細胞の増殖に関わる特定の分子(たんぱく、遺伝子)を狙い撃ちしてがんの増殖を抑える薬で、正常細胞は傷つけないという利点があります。半面、特定の分子をもたないがんには、ほとんど効果がありません。
今後も新薬が毎年のように登場します。最新の知見を取り入れ、その患者さまに適した治療を行っていきます。特殊な放射線治療や未承認の新薬など、紹介できることがあれば、他院とも連携して治療を行っていきます。
◆抗がん剤の副作用
以下のような副作用が出ることがあります。
- 抗がん剤の副作用:
アレルギー症状、吐き気、下痢、便秘、脱毛、口内炎、倦怠感(けんたいかん)、末梢神経障害など。 - 分子標的薬に多い副作用:
間質性肺炎、皮疹(ひしん)、下痢、高血圧、喀血(かっけつ)・血尿、たんぱく尿など。
◆体の痛みや心のつらさを我慢しないで!
苦痛を和らげてくれる専門家がいます。まずは担当医や看護師に相談しましょう。
体の痛みには、緩和ケアチームが対応します。看護師や薬剤師、心理士、医師、リハビリテーションスタッフ、歯科医師などで構成され、担当医や看護師と協力しながらチームでケアにあたります。身体の苦痛や心のつらさを和らげることを支援する病棟(緩和ケア病棟)もあります。
心のつらさには、臨床心理士が対応します。不安や落ち込みで眠れないときなどに支援にあたります。
経済的困難に対しては、ソーシャルワーカーやがん相談センターのメンバーが対応します。治療費の大半は公的医療保険が適用となり、自己負担は1〜3割です。さまざまな制度がありますので、相談してください。
苦痛を和らげてくれる専門家がいます。まずは担当医や看護師に相談しましょう。
体の痛みには、緩和ケアチームが対応します。看護師や薬剤師、心理士、医師、リハビリテーションスタッフ、歯科医師などで構成され、担当医や看護師と協力しながらチームでケアにあたります。身体の苦痛や心のつらさを和らげることを支援する病棟(緩和ケア病棟)もあります。
心のつらさには、臨床心理士が対応します。不安や落ち込みで眠れないときなどに支援にあたります。
経済的困難に対しては、ソーシャルワーカーやがん相談センターのメンバーが対応します。治療費の大半は公的医療保険が適用となり、自己負担は1〜3割です。さまざまな制度がありますので、相談してください。