2016年02月13日

らくわ健康教室「排尿に関するお話 〜トイレが近い。おしっこが出にくい。こんな時には?〜」

7月21日開催のらくわ健康教室では、「排尿に関するお話 〜トイレが近い。おしっこが出にくい。こんな時には?〜」と題して、洛和会音羽病院 泌尿器科 医長で医師の柴崎 昇(しばさき のぼる)が講演しました。

概要は以下のとおりです。

8931.jpgはじめに
外来診療のとき、よくこんな質問を受けます。「何回もトイレに行きたくなるのはなぜ?」「急におしっこに行きたくなります」「おしっこをするのに時間がかかります。なかなか出ません」「夜、何回もトイレに起きるんです」…。本日は、それぞれの理由や対応、治療法についてお話しします。


排尿のしくみ
おしっこは、膀胱におしっこがたまる蓄尿期と、排尿期への移行段階、おしっこを出す排尿期という3段階を経て排出されます。蓄尿期は、腎臓から出てきたおしっこが膀胱にたまります。その際、尿道括約筋が収縮し、膀胱がいっぱいになるまで、おしっこが出てしまうのを防ぎます。膀胱がいっぱいになると、信号が脳に送られ、排尿期に移行します。排尿期には尿道括約筋がゆるみ、膀胱が収縮しておしっこを排泄します。
これらの排尿の仕組みのどこかに異常があると、頻尿(トイレが近い)や、排尿障害(おしっこが出にくい)といった症状が出てきます。

頻尿と尿意切迫感
「トイレが近いんです」「急におしっこがしたくなります」。これらの症状を、「頻尿」や「尿意切迫感」と言います。「頻尿」の定義を、日本泌尿器科学会ホームページでは「昼間8回以上、夜間2回以上、トイレに行くこと」としています。頻尿は、膀胱におしっこがたまりきらないうちに膀胱が収縮することによって起こります。ただ、この回数より少なくても困っていて治療が必要な人もいれば、この回数以上でも治療が必要でない人もいます。回数は目安程度に考えたら良いでしょう。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
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このほか、明らかな原因のないものを「過活動膀胱(OAB)」と言います。

排尿困難
「おしっこが出にくいです」「出るのに時間がかかります」。これらの症状を「排尿困難」と言います。排尿困難は、膀胱の収縮力の低下や、前立腺・尿道での抵抗の増加により起こります。男性に多い症状です。
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これらのうち、最も多いのは前立腺肥大と神経因性膀胱です。

治るの? …まずは検査を
治療は、原因を調べてから、それぞれの原因に合わせて行います。
どんな検査をするの?
  • 問診…排尿に関する質問をします
  • 検尿…おしっこの状態を調べます
  • 腹部超音波検査…腎臓・膀胱・前立腺などの状態を調べます
  • 排尿日誌…おしっこをした時刻、1回ごとの量などを記録します
  • 尿流量率測定…おしっこの勢いを調べます
このほか、必要に応じて、ウロダイナミクス(排尿動態検査)、膀胱鏡検査、レントゲン、CT検査、血液検査、尿細胞診検査などを行います。
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排尿日誌とは、排尿するたびに、その時刻と尿量を記録する日誌です。コーヒーなどの水分補給も記録し、尿もれなどがあれば、それも時刻と量を記録します。排尿日誌をつけることで、1日の排尿パターンや膀胱の容量などがわかります。昼間に尿量・尿回数が多いのか、夜間に多いのか、尿量が多いのか、膀胱の容量が大きいのか小さいのか。飲水量が多く、多尿になっていないかなどを調べることは、治療方針を考えるうえで非常に重要です。近年、水分補給の重要性が広まり、なかには1日3,000ccもの水分をとり、おしっこの量が多いと話す人もいますが、水を取り過ぎればおしっこの量が増えるのは当然です。1日のおしっこの量が2,000ccぐらいなら、適度に水分がとれていると考えて良いでしょう。
尿流量率測定検査は、時間あたりの尿量を計測することにより、尿の勢いを客観的数値として評価します。
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検査結果を踏まえて治療を行います
<頻尿・尿意切迫感の原因と治療>
  1. 膀胱炎、前立腺炎などの尿路感染症(細菌感染)
    抗生物質を投与してばい菌を殺します。普通、2・3日で治りますが、途中で薬の服用をやめてしまうと、菌を殺し切らない状態となり、また症状が出てきます。薬はきちんと飲み切ってください。
  2. 間質性膀胱炎などの非細菌性炎症性疾患
    発生は比較的少ないですが、痛みなどが続きます。泌尿器科で相談してください。
  3. 膀胱がん、前立腺がんなどの悪性腫瘍
    頻尿の検査でがんが見つかることがあります。その場合は、がんの治療を優先します。
  4. 膀胱結石、尿管結石
    膀胱に結石がとどまっている場合は、手術で除去します。尿管結石の場合、石が小さいときには自然に尿とともに流れることもあります。
  5. 前立腺肥大症 
  6. 脳や脊髄などの神経系疾患による神経因性膀胱
    脳梗塞や糖尿病などが原因で頻尿が起きることがあります。まずは原疾患の治療が重要です。
<排尿困難の原因と治療>
  1. 前立腺肥大症
  2. 尿道狭さく
  3. 前立腺がん、膀胱がんなどの悪性腫瘍
  4. 骨盤臓器脱
  5. 脳や脊髄などの神経系疾患による神経因性膀胱
  6. 糖尿病性神経障害による神経因性膀胱
  7. 骨盤内手術の既往 
いずれも、原疾患の治療に加えて、投薬治療などを行います。

過活動膀胱ってなに?
過活動膀胱は、特定の原因疾患が見当たらないものの、尿意切迫感が必ずあり、通常は夜間頻尿と頻尿を伴う症状がある症候群です。
具体的には、急におしっこがしたくなってもれそうな感じになる、日中のトイレ回数が多すぎる、夜寝てから1回以上トイレに起きる、尿意切迫感とともにおしっこをもらしてしまうといった症状です。男女とも50歳代までは少ないですが、60歳代から増え始め、70歳代以上では4人に1人は過活動膀胱ともいわれます。そのため、病気というより加齢現象の一つと考えるべきではという意見もあります。

過活動膀胱は、日々の意識により症状が改善することもあります
  • 膀胱訓練
  • 骨盤底筋体操
  • 寒いところで長時間過ごすことは避ける
  • 刺激物、過剰な水分摂取、カフェイン、アルコールなどを控える
  • 便秘にならないようにする
  • 早めにトイレに行く・トイレの場所を確認する
  • 薬を服用するときは、医師に相談する
<膀胱訓練の方法>
尿意を感じたら、5分間がまんする。5分間がまんできるようになったら10分間、10分間できるようになったら15分間がまんする…というふうに、できる範囲で少しずつ排尿間隔を延ばしていきます。

<骨盤庭筋体操>
尿道を締める力を強くします。 
  1. 仰向けに寝て両足を肩幅程度に開いて、両ひざを軽く立てる
  2. 体の力を抜いて、膣と肛門を意識的に締め、ゆっくり5つ数えてからゆるめる
  3. 「ゆっくりと締めて、ゆっくりとゆるめる」動作と、「速く締めて、速くゆるめる」動作を合わせて20〜30回繰り返す
  4. 以上の動作を1セットとし、1日に2〜3セット行う。
このほかにも、いすに座った状態や、テーブルに手をついて立った状態、お風呂の中でも同様の体操をすることができます。

日常生活では、以下のことに注意しましょう
  • 早めにトイレに行く
    普段は膀胱訓練を行いますが、外出時などは尿意があってもがまんしていると、トイレまでがまんできずにもれてしまうことがあるので、少し早めにトイレに行くようにしましょう。
  • 外出時などはトイレの場所を確認しておく
    急に尿意を感じたときに慌てないように、あらかじめトイレの場所を確認しておくと安心です。
  • すぐトイレに行けるような環境をつくる
    夜寝るときに、トイレに近い部屋で寝たり、ポータブルトイレや採尿器を使ったり、すぐ脱げるような着衣を工夫する。
  • 寒い所で長時間過ごすことを避ける
    寒さにより、膀胱が刺激されて過敏になり、尿が近くなったり、もれやすくなったりします。
  • 過剰な水分やカフェインの摂取は避ける
    尿が出やすくなるカフェインを含む飲み物を控え、過剰な水分摂取をしないようにします。
  • 便秘に注意する
    ひどい便秘をすると尿が出にくくなることがあります。
  • ほかの病気の薬を飲むときは医師に相談する
    薬のなかには、膀胱や尿道の働きに影響するものがあり、尿失禁を起こしやすくするものや、排尿困難を起こすものがあります。
薬により症状の改善が期待できます
標準治療(国が効果を認めている治療)として、抗コリン剤(オキシブチニン、プロピベリンなど)とβアドレナリン受容体作動薬(ミラベグロン)があります。標準治療以外の薬では、漢方薬や、三環系抗うつ薬による治療があります。これらは人によって効果がまちまちですが、よく効くケースもあります。

前立腺肥大症
前立腺肥大症の定義は「前立腺の良性過形成による下部尿路機能障害を呈する疾患で、通常は前立腺腫大と下部尿路閉塞を示唆する下部尿路症状を伴う」とされています。
つまり、前立腺が大きくなっているため、おしっこが出にくい・時間がかかるといった下部尿路閉塞症状が出る病態のことです。前立腺は男性だけにある臓器で、尿道をはさむように2つありますが、80歳ぐらいまで持続的に大きくなり、尿道を圧迫しておしっこが出にくくなります。
前立腺肥大症と前立腺がんは、別の疾患ですが、その鑑別は非常に重要です。前立腺がんの有無はPSA検査などでわかりますので、定期的な健診をお勧めします。

前立腺肥大症の治療
前立腺肥大症の治療には、薬物療法と手術療法、尿道カテーテル留置もしくは間欠的自己導尿があります。薬物療法には、前立腺部尿道の抵抗を下げるタイプ(おしっこの通り道の筋肉が緊張するのをゆるめる)と、前立腺を小さくする薬が主として用いられます。そのほかの薬物療法としては、漢方薬などを補助的に用いることがあります。人によっては劇的に効くこともあります。
手術療法は、尿道から内視鏡を挿入し、前立腺を内側から削ったり、くり抜いたりします。

おわりに
「トイレが近い」「おしっこが出にくい」と言った症状で悩んでいる方はたくさんおられます。まずはかかりつけ医や泌尿器科医に相談してみてください。

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