2016年03月19日

らくわ健康教室「音楽療法 〜音楽で生き生きとしたリハビリを!〜」

2015年12月3日開催のらくわ健康教室では、「音楽療法 〜音楽で生き生きとしたリハビリを!〜」と題して、洛和会京都音楽療法研究センター 係長で音楽療法士の柴田 恵美(しばた えみ)が講演しました。
概要は以下の通りです。

講師写真.jpgはじめに
洛和会京都音楽療法研究センターには、センター長の矢野ひとみのほか、5人の音楽療法士がいます。私たちは、洛和会ヘルスケアシステムの健診センターを含む、医療、介護、保育などの各施設に出向いては、音楽療法を行っています。本日は、音楽療法の内容や効果、実際の活動などについて、歌唱活動を中心にお話しします。

音楽療法の内容
音楽療法には、主として以下のようなものがあります。
歌   唱 : 季節の歌や好きな歌を歌う。
演   奏 : 太鼓、シンバル、ツリーチャイム、ハンドベルなどを演奏する。
即   興 : 歌や楽器演奏によって気持ちを表現する。
鑑   賞 : 演奏を聴く。
創作活動 : 詩を書く、曲を作る、楽器を作る。
語   る : 音楽について語ったり、音楽を通して語る。

歌唱活動がもたらすもの
歌うことだけでも、以下のような効果があります。

身体的に
  • 呼吸改善
    歌うことで、自然で積極的な呼吸が促され、歌い続けることによって、肺活量・呼気量がともに増します。また、腹式呼吸を促すことで、新しい酸素を十分に体内に取り込み、内臓を元気にします。
  • 発声
    言葉をはっきり歌うと、発音(構音)の訓練になります。年齢を重ねると、音域が狭くなったり、声の質の変化が起きますが、歌うことで発声し、発語・発話、声帯の機能維持改善に役立ちます。
  • 摂食・嚥下の機能維持・改善
    食事をするとき(咀嚼(そしゃく)や飲み込み、舌の動きなど)と、話したり声を出したりするとき(発音、発語・発話)は同じ器官を使っているため、言葉をはっきり歌うことで、摂食・嚥下に関連する器官(口唇、舌、声門閉鎖など)の訓練になります。
  • 唾液の分泌を促す
    人間の口腔内は細菌にとって繁殖しやすい環境です。特に、口腔内が乾燥状態にあると、口腔内細菌数の増加につながります。唾液は、口腔衛生を保つうえで必要なものです。
また、歌うことで表情筋が動き、豊かな表情をもたらすことにつながります。

心の活性化
  • 気分転換
    思い切り声を出して好きな歌や懐かしい歌を歌うことで、ストレス発散に役立ちます。
  • 一体感や社会性
    誰かと一緒に歌うことで、コミュニケーションの活性化や芸術・美的体験を共有できます。
  • 回想法
    その歌を聞いていたころや出来事を思い出し、長期記憶の想起や人生の振り返りに役立ちます。
  • 自己表現
    声による表現(歌うこと)や、言葉の表現(詩の創作、作詞)は、自己表現につながります。

腹式呼吸
  • 腹式呼吸をすると、酸素が肺の下のほうに多く入り、全身をめぐる酸素量が増えます。加齢とともに、呼吸が浅くなり、ガス交換の効率が下がるため、酸素が十分に体内に取り込まれず、疲れやすくなったり、抵抗力が落ちて、インフルエンザや肺炎にかかりやすくなります。十分な酸素量を維持することは大切です。
  • 腹式呼吸をすると、横隔膜が上下運動します。反動で内臓も大きく上下し、血液やリンパ液の流れが促進され、全身の血行や新陳代謝を向上させます。
  • 深くゆっくりとした呼吸は、リラックス効果もあります。リラックス時に働く副交感神経がスムーズに動き、ホルモンの分泌や免疫の働きが正常になります。
腹式呼吸をやってみましょう
慣れるまで、無理なく行ってください。
  1. 姿勢
    背筋を伸ばし、足の裏を床にぴったり付けます。膝は腰幅程度に広げます。
  2. まず吐く
    自然の呼吸で得た空気を吐き出し、肺の容量を空けます。
  3. 鼻から吸う
    肩や胸に力が入らないように、何か良い香りを嗅ぐように吸います。鼻には空気の“清浄機”と“加湿器”の役目があります。鼻の粘膜が外気の不純物やゴミを排除し、きれいな空気を体内に取り込むことができます。
  4. 口から吐く
    唇を「ウ」の形にすぼめて、ゆっくりと長く吐きます。
音楽療法の効果
  • リハビリテーションの促進
  • コミュニケーションの活性化
  • 心身の健康の促進
  • ストレス管理
  • 痛みの緩和
  • 感情の表現
  • 認知症予防
    などの効果があります。

歌唱によってこんな効果が
(1)グループセッションに参加した患者さま
 「ここで腹式呼吸のことを教わってから、本当に声が出るようになりました」
 「一人でいたら、しゃべることもないし、声も出さないもんね」
先述しましたように、年齢を重ねると声帯の力は弱くなり、声の音域も狭くなります。声の音域も加齢とともに狭くなります。声の質の変化によって歌うことがおっくうになる方もいらっしゃいますが、深い呼吸とともに、おなかから声を思いきり出し、歌ってみましょう。
(2)個人セッションを体験したAさん
趣味で演歌を歌って楽しんでいたAさん。病気を機に、声が出にくくなりました。特に声の伸びがなくなったことを強く実感していました。そのことを意識するあまり、喉や声帯に緊張があり、余計に出にくくなっていました。個人セッションで、好きな歌を楽しく、また、グループセッションにも参加し、仲間と歌うことで緊張が緩和され、歌声を取り戻していきました。声を出すためには、緊張せず、リラックスしていることも大切です。

おわりに
歌にはフレーズ(節)があり、メロディーラインがあります。サビ(メロディーが一番盛り上がる部分)があったり、展開部があります。私たちは歌うとき、それらに合わせて、ブレス(呼吸)をしています。例えば、高い音程から始まるのならば、その前の呼吸は大きくとるでしょうし、速く細かい音が続けば、素早い呼吸をするでしょう。長いフレーズのサビを歌う前には大きく吸い、最後の一音はやさしい声で歌うため、そっとやわらかな息を吐くかもしれません。
このように、歌に合わせて呼吸のリズムや大きさ、速さ、深さなどを、私たちは適切に調節しています。好きな歌を歌いながら、呼吸の訓練をすることができるのです。
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