概要は以下の通りです。
◆大腸に関係する症状
「出血」や「腹痛」「下痢」「便秘」「腹部腫瘤(しゅりゅう)」などの症状がある場合は、大腸に何らかの異常がある可能性が疑われます。
- 「出血」
血便や便潜血反応陽性の場合です。血便は、肉眼的に明らかな鮮血あるいは暗赤色の血液が便に付着・混入あるいは血液のまま排泄されるため、確認できます。 - 「腹痛」
心窩部(しんかぶ)や右季肋部(みぎきろくぶ)、左季肋部(ひだりきろくぶ)、臍部(さいぶ)、右下腹部、左下腹部、下腹部、腹部全体、背部など、各部の痛みが大腸と関係していることがあります。 - 「下痢」
回数が明らかに増えたり、便の液状化、便の色が透明や白色であったり、血液が混じることがあります。 - 「便秘」
3〜4日連続して排便がない場合や、1回の排便量が少ない、排便に時間を要する、便が固く排便痛を伴う、排便困難を自覚する、残便感があるような場合です。便が細かったり、便に血液が混じる場合もあります。 - 「腹部腫瘤」
部位や大きさ、性状(硬さや表面の凹凸、可動性)によって、判断します。
大腸カメラは、以上のような症状だけでなく、大腸がんの多発家系や腫瘍マーカー高値の場合に行います。
大腸カメラで診断が可能な主な病気は、以下のとおりです。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
◆日本のがん死亡数
2014年の統計では、日本人のがん死亡数は、男性が(1)肺がん(2)胃がん(3)大腸がんの順。女性は(1)大腸がん(2)肺がん(3)胃がんの順です。これらのがん死亡数を減少させるためには、早期発見が必要です。
◆日本の大腸がん検診プログラム
毎年または1年おきに、40歳以上の男女を対象に、便潜血反応(免疫法)2日法が行われています。便潜血反応が陽性の場合、精密検査として全大腸内視鏡検査または注腸X線検査+S字結腸内視鏡検査を行います。(大腸がん検診マニュアル:2013年)
◆大腸内視鏡検査
当院での前処置を説明します。検査前日午後9時に、ラキソベロン1本とベンコール6錠を飲みます。
検査当日の朝、モビプレップ1.2L(コップ約8杯)と、水やお茶(ペットボトル500ml)を適宜飲みます。便を全て出し、腸内が空になった状態で、肛門から内視鏡を入れて調べます。
検査時に鎮痛剤や、まれに鎮静剤を用いる場合があります。鎮静剤は、不安や苦痛を取り除く効果がある半面、意識がなかなか戻らず、極めてまれに死亡例も報告されています。洛和会丸太町病院では、通常、検査時には使用していません。鎮静剤の使用を希望される場合は、前もって消化器内科外来で予約時に相談していただきます。
◆検査における合併症
極めてまれですが、以下のような確率で起きています。
◆大腸スコープの選択
大腸スコープは太さで、細径・中間径・太径の3種類に分類されます。細径は直径11.3mm、中間径は12.2mm、太径は13.6mmで、また、長いスコープもあります。通常は中間径あるいは細径を用いますが、患者さまの体型などを考慮し、最適なものを使用します。
◆大腸内視鏡の挿入
両手の協調操作で行います。左手は、中指・薬指・小指の3本でスコープの手元操作部をしっかり保持し、親指でアングル操作を行います。右手は、肛門から5〜30cm手前でスコープを持ち、右(時計方向)捻りと左(反時計方向)捻りあるいは押し引き操作を行います。
両手の手技によってスコープを挿入しますが、補助的な手技として、おなかの適切な場所を手で圧迫したり、体位を変えたり、呼吸性変動を利用したりします。
◆大腸カメラ検査の手順
- 検査歴、手術既往歴、身長、体重を調べてスコープを選択する。
- 十分準備が整ってから検査室に入っていただく。
- 検査台にあおむけに寝てもらい、診察をして、手術痕や腹壁の緊張をみる。
- 左側臥位で直腸診をした後、スコープ挿入を開始する。
- 腸が大きく延びる場合は、本人に前もって声を掛ける。
- スコープが盲腸まで到達したら、ゆっくり引きながら観察する。適宜、体位変換を行う。
- 上行結腸と直腸ではできるだけスコープを反転して、盲点をなくす。
- 検査後、本人に説明する。詳しい説明が必要な場合は、後日外来を受診していただく。
私たちは日々工夫し、より良い、苦痛のない方法を探究しながら検査を行っています。大腸カメラで最大限の診断をするべく努力していますが、それでも見えにくいところがあり得ます。1回の検査で異常がなくても、定期的な検査(3年間隔)をお勧めしています。洛和会丸太町病院では、私たちスタッフが真摯に対応しますので、安心して検査をお受けください。