2016年04月12日

らくわ健康教室「脳卒中の診断・予防・治療について」

2016年1月27日開催のらくわ健康教室では、「脳卒中の診断・予防・治療について」と題して、洛和会音羽病院 脳神経外科 副部長で医師の岩室 康司(いわむろ やすし)が講演しました。

概要は以下のとおりです。

5511.jpg脳卒中とは
卒中とは、「卒然(突然)、中(あた)る」という意味で、「中気」や「中風」、「脳溢血」とも呼ばれてきました。脳血管障害の総称を示す言葉が「脳卒中」だといえます。脳卒中に含まれる疾患には、脳の血管が詰まる脳梗塞や、脳の血管が破れる脳内出血、くも膜下出血があります。


脳卒中は増えている
主要死因別の死亡率をみると、50年ほど前に日本人の死因第1位だった脳卒中は減ってきました。現在は、がん、心臓病に次いで第3位です。しかし受診率でみると、脳卒中になる人は増えています。亡くなる人は減ったものの、脳卒中で要介護状態となった人が増えているわけです。脳卒中の内訳では、脳梗塞が増えているのが特徴です。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
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脳卒中の種類1 「ラクナ梗塞」
脳の主幹動脈から分岐する細い動脈が詰まる疾患です。塩分の多い食事や脱水などが影響しています。細い血管とはいえ、手足を動かす機能を担っている血管も多く、大きな障害を引き起こします。

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脳梗塞の種類2 「心原性塞栓症」
心臓病でできた心臓内の血栓が脳に飛んで、脳の血管が詰まる疾患です。梗塞部分は2〜3日すると腫れてきて脳を圧迫しますので、早く治療しないと命にかかわります。心房細動という不整脈がある方は、血栓の予防のために、血液をさらさらにするお薬の内服が勧められます。

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次のような人は、得点が高いほど、脳梗塞になりやすいため、かかりつけ医に相談してください。
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高血圧は140/90mmHg以上を指します。
※「NOAC」とは、血液をさらさらにする新しい薬のことです。

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INRコントロール不良とは、薬を飲んでも血糖コントロールが不良なことです。

脳梗塞の種類3 「アテローム血栓性梗塞
頸動脈や中大脳動脈などの脳主幹動脈のアテローム硬化による狭窄(きょうさく)・閉塞によって起こる疾患です。アテロームは、血管内の蓄積物で、コレステロールなどを含むおかゆのような脂質の塊(粥腫(じゅくしゅ))です。
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↑ 頸動脈の血管内膜にびっしり詰まったアテローム

脳卒中データバンクによれば、3種類の脳梗塞のうち、肉食の増加など食習慣の変化の影響でアテローム型の発症が年々増え、現在では半数以上を占めています。続いて心原性塞栓症、ラクナ梗塞の順となっています(2005〜2007年統計)。

内頸動脈狭窄症−脳梗塞の原因となる
首の内頸動脈にアテロームがたまる狭窄症は、高齢化の進行や、食生活の変化、糖尿病、肥満、脂質代謝異常、メタボリックシンドロームなどの影響で増えています。アテローム血栓症は、さまざまな血管病変と合併することが特徴です。心血管、頸動脈、足などの抹消血管の順に、他部位の血管病変の頻度が増えていきます。首だけ診るのではなく、全身疾患として対応する必要があります。

脳卒中の発症予防(脳卒中ガイドライン2015)
  • 高血圧の人: 
    降圧療法が強く勧められます。降圧目標は140/90mmHg未満です。糖尿病やたんぱく尿が合併している場合は130/80mmHg未満、後期高齢者は150/90mmHg未満を目標としても良いとされています。
  • 糖尿病の人:
    血糖のコントロールが勧められますが、脳卒中の予防効果については、まだよくわかっていません。
  • 脂質異常症の人:
    LDLコレステロールをターゲットとした薬(スタチン)の投与が強く勧められています。
  • 喫煙している人:
    喫煙は、脳梗塞、くも膜下出血の危険因子です。受動喫煙も脳卒中の危険因子となり得るので、受動喫煙回避も重要です。禁煙教育やニコチン置換療法、経口禁煙薬などによる治療が勧められます。
  • メタボリックシンドロームの人:
    脳梗塞の危険因子であり、適切な体重までの減量と運動・食事による生活習慣の改善を基本に、脂質異常症や高血圧治療も勧められます。
ハイリスク群の管理
慢性腎臓病(CKD)は、脳卒中を引き起こすハイリスク疾患です。
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脳梗塞の症状と治療について
脳梗塞の治療は、時間との勝負です。そのためにも、どんな症状が起きるかをよく覚えてください。
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脳梗塞に陥った部分は、もとには戻りません。脳梗塞が完成されるまでに少しでも残存血流を確保することが重要です。

<血栓溶解療法>
  1. 遺伝子組み換え組織プラスミノゲンアクティベータ(tPA)の静脈内投与(血栓溶解療法:アルテプラーゼ静注療法ともいう)は、発症から4.5時間以内に治療可能な虚血性脳血管障害で慎重に適応判断された患者さまに対して強く勧められます。
  2. 発症後4.5時間以内であっても、治療開始が早いほど良好な経過が期待できます。このため、患者さまが来院したのち、少しでも早く(遅くとも1時間以内に)血栓溶解療法を始めることが強く勧められます。
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  3. tPAの静脈内投与により血流再発が得られなかった、あるいは血栓溶解療法非適応の場合、原則として発症から8時間以内の虚血性脳血管障害に脳血栓回収用機器による血管内治療を追加することを考慮されます。
<内膜剥離術(CEA)>
内頸動脈の血流をクリップで止め、血管を開いてどろどろのアテロームを除去します。この間、チューブでバイパス状に血を流しながら行います。

<血管内治療(CAS)>
血管内にカテーテルを入れ、アテロームの上にステントを網状に広げて、アテロ―ムが末梢血管に流れないようにし、また、血管を広げることで、血流を改善します。
近年は、血管内治療を選択するケースが増えています。また、tPA単独で治療を終えたケースと、tPAと血管内治療を両方行ったケースを比較すると、両方行ったほうが回復の可能性が広がるとのデータもあり、選択肢として増えていく可能性があります。

こんなときとき、どうしますか?
家族の誰かが、1時間前に急に右上下肢とも動かなくなり、倒れた。問いかけても発語がなかったが、5分ぐらいすると徐々に右上下肢を動かし始め、言葉も少しずつ出るようになった。10分ほどで軽快した。あなたは、「心配なので病院に行こう」と何度も言うが、頑として聞き入れない。

あまりしつこく言ったところ、逆に強く責められたため、病院に行くのをあきらめ、様子を見ることにした。
もし次に症状が出たら必ず病院に行くことを約束してもらい、今日のところは様子を見ることにした。
近所の力の強そうな人にお願いし、無理やり病院に連れて行った。

家族の命を守るために正しい対応はです。理由は以下の通りです。

上記の人の病名は、「一過性脳虚血発作」です。
以下のような状態の場合、
  1. 年齢:60歳以上である…1点
  2. 血圧:140/90mmHg以上である…1点
  3. 神経症状:片側の麻痺がある…2点、言語障害がある…1点
  4. 症状の持続時間:60分以上…2点、10〜59分…1点
  5. 糖尿病である…1点
これらの合計点が0〜3点なら2日以内に脳梗塞が発症するリスクは1%、4〜5点なら4.1%、6〜7点なら8.1%となります。
たとえ一過性であっても、脳梗塞と同様の治療検査を受ける必要のある状態です。強い意志で、何があっても病院に連れて来てください。

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