2016年09月23日

らくわ健康教室「風邪に抗生物質が効かないって本当?」

2016年3月8日開催のらくわ健康教室では、「風邪に抗生物質が効かないって本当?」と題し、洛和会丸太町病院 救急・総合診療科 医員で医師の南 尚吾(みなみ しょうご)が講演しました。
概要は以下の通りです。

9268.jpgはじめに
「風邪」や「抗生物質」...名前は知っていても実際にはどんなものか意外と知らない方が多いようです。本日は風邪や抗生物質とはどんなものか,また両者の関係についてお話をしていきます。

そもそも風邪ってなんでしょう?
「風邪」のイメージとしては、「鼻水がひどくなる」「熱が出て喉も痛くなってしんどい」「咳や痰(たん)が出る」などが浮かびます。「放っておいたら治る」と思う人も、「抗生物質をもらいに行かなくては」と思う人もいます。
風邪の定義は、「さまざまなウイルスが原因となる上気道症状のこと」とされています(Medical infectious diseaseより抜粋)。つまり、風邪はウイルスによって引き起こされる疾患です。

ウイルスと細菌
ところで、病気の原因には、ウイルス以外に細菌もありますね。それでは、ウイルスと細菌は、どう違うのでしょう? 下記のような、さまざまな違いがあるのです。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
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これまでのまとめ
  • 風邪の原因は、ウイルスである。
  • ウイルスと細菌は、異なる病原体である。
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    ↑ ウイルス(左)と細菌(右)は、大きさがこんなに違います
抗生物質って何?
抗生物質のイメージは、「風邪を治す薬」「ばい菌をやっつける薬」「とりあえず病院に行ったら出される薬」「熱冷まし」などでしょうか。
実際に処方箋を見てみましょう。以下の薬のうち、抗生物質はどれでしょう?
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答えは、3番目の「メイアクトMS錠」です。でも説明には、「細菌による感染症を治す抗菌薬です」と書かれていますね。抗生物質と呼ばれている薬の多くは、細菌を殺す抗菌薬のことなのです。
抗菌薬は、イギリスの軍医だったフレミングが、アオカビで細菌の発育を妨げることに気付き、濾(ろ)過液を精製、「ペニシリン」と名付けたのが始まりです。世界初の抗菌薬の誕生(1929年)でしたが、当初は誰にも評価されず、十数年後にほかの2人の研究者によってやっと正しく評価され、一般に広まりました。3人は1945年にノーベル医学生理学賞を受賞しました。

抗菌薬の作用機序
抗菌薬は、細菌のもつ細胞壁を破壊することで、細菌を死滅させます。一方、ヒトの細胞には細胞壁がないため、抗菌薬が効きません。ウイルスもまた、細胞膜がありません。そのため、抗菌薬である抗生物質を与えても、効果がありません。

これまでのまとめ
  • 抗生物質は、細菌をやっつける薬である。
  • 抗生物質は、ウイルスには効果がない。
風邪はウイルスによって引き起こされる疾患ですので、抗菌薬は効かない。これが結論です。2003年に日本呼吸器内科学会が発行した「成人気道感染診療の基本的考え方」にも、「風邪はウイルスが原因であり、抗菌薬は不要」と初めて明記されました。
一方、肺炎や尿路感染症は、細菌が悪さをしている疾患ですので、抗菌薬は効果があります。

抗菌薬
は、なぜ乱用してはならないのか
薬による副作用と、耐性菌の増加が心配されるからです。
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「薬を飲んだら、口の中が真っ赤になり、ただれた」と救急受診される方もいます。実際に薬剤副作用で救急受診した患者のうち約5分の1が抗菌薬が原因であったという報告もあります。
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抗菌薬が効かない耐性菌の割合を見ると、ペニシリンはもう半分ほどの人しか効かず、クラリスという名で広く使われた抗生物質は、マクロライド耐性肺炎球菌の影響で、もうほとんど効かなくなってしまいました。
日本では効きますが、海外では効かない抗生物質もあります。例えば、バンコマイシンは、耐性菌の割合が日本では0.7%で、よく効く薬ですが、米国では79%にも達し、多くの人に効かない薬となっています。多剤耐性緑膿菌も日本の0.1%に対し、米国では34%に達しています。
「2xxx年、耐性菌で抗菌薬が使えない。耐性菌感染症では、有効な薬剤がないため、ただ神に祈るしかなかった過去の時代に逆戻りする」そんなことが、もう夢物語ではなく、現実に起こりつつあります。

では、どうしたらいいのでしょうか
世界保健機関(WHO)では、2015年から世界抗菌薬啓発週間を設け、未来の子どもたちに抗菌薬を残すようにと、不要な抗菌薬の使用を控える運動に取り組んでいます。
大切なことは以下の通りです。
  • 必要のないときには抗菌薬をもらわない。
  • 出された抗菌薬は最後まで飲みきる(中途半端で終わると、菌が残って耐性をつける)
  • 抗菌薬を他人にあげたり、もらったりしない(抗菌薬は、短期日しか効かない)
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まとめ
  • 風邪に抗菌薬は効きません。
  • 不要な抗菌薬の使用は副作用や耐性菌の原因となります。後世の人々のためにも、適正な抗菌薬の使用を行うことが大切です。
質疑応答より
タミフルやリレンザといった抗ウイルス薬については、多用しても大丈夫なのでしょうか?
タミフルについても耐性ウイルスの報告がなされているため同じく不必要な使用は控えるべきであると思われます。私自身は、風邪に対し抗菌薬は処方していません。
たくさんの薬を処方してくれる医師も多いですが…。
患者さまも、「なぜ抗生物質が必要ですか?」と聞く勇気をもってください。私自身は、風邪に対し、解熱剤以外は処方していません(細菌が関係する肺炎などが疑われれば、抗生物質も投与しますが)。要は、医師も患者さまも、不要な抗生物質を減らす努力を重ねることが重要であると思っています。



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