2016年3月16日開催のらくわ健康教室では、「甲状腺の病気について 〜バセドウ病を中心に〜」と題し、洛和会音羽病院 内分泌内科 部長で医師の三浦 晶子(みうら まさこ)が講演しました。
概要は以下の通りです。
概要は以下の通りです。
◆甲状腺とは
甲状腺は、喉仏の少し下にある小さな臓器で、蝶が羽を広げたような形をしています。甲状腺は食物中のヨードを取り込んでホルモンを作ります。甲状腺から分泌されるホルモンには、甲状腺ホルモン(T4、T3)のほか、カルシウム調節ホルモンであるカルシトニンがあります。甲状腺ホルモンは、小児の発達に重要な働きを担っており、大人の新陳代謝にも深く関わっています。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
◆甲状腺の病気
甲状腺の主な病気は、
- 甲状腺ホルモンのバランスが乱れる病気
- 甲状腺に腫瘍ができる病気
- 甲状腺に炎症が起きる病気
- そのほか
に大別されます。
代表的な疾患は、「バセドウ病」です。
◆バセドウ病とは
バセドウ病は、甲状腺に特異的に関わる自己免疫疾患です。自己免疫疾患とは、体にとって良くない異物を取り除こうとする免疫の仕組みが乱れ、自分の体の一部を異物として認識してしまい、抗体をつくってしまう疾患です。その結果、さまざまな症状が現れます。
◆バセドウ病の治療法
治療法には、薬物治療と外科治療、アイソトープ治療の3つがあります。それぞれにメリットとデメリットがありますが、日本では9割以上の患者さまが薬物治療を、米国では9割方がアイソトープ治療を選択しています。
◆バセドウ病とは
バセドウ病は、甲状腺に特異的に関わる自己免疫疾患です。自己免疫疾患とは、体にとって良くない異物を取り除こうとする免疫の仕組みが乱れ、自分の体の一部を異物として認識してしまい、抗体をつくってしまう疾患です。その結果、さまざまな症状が現れます。
◆バセドウ病の治療法
治療法には、薬物治療と外科治療、アイソトープ治療の3つがあります。それぞれにメリットとデメリットがありますが、日本では9割以上の患者さまが薬物治療を、米国では9割方がアイソトープ治療を選択しています。
◆バセドウ病の薬物治療
バセドウ病の薬による治療では、第1選択としてメルカゾール(一般名チアマゾール)が推奨されています。チウラジールなどほかの薬と比べて最終的な治療効果に明らかな差はない一方、1日1回の服用で良いことや、重大な副作用が起こりにくいといった利点があるためです。副作用には、無顆粒球症や重症肝障害などがあり、発症の頻度は低いですが、起こってしまうと重症になるため、服薬を始める際は慎重に経過をみていく必要があります。副作用の8割方は服用開始3カ月以内に起きますので、そこを乗り切れば、薬を減らしたり、おおむね順調に治療が進められます。
薬物治療は、抗甲状腺薬1錠隔日服用で半年以上の間甲状腺機能が正常に保たれていれば、中止を検討して良いとされ、逆に、抗甲状腺薬を1.5〜2年続けた時点で休薬できる見通しが立たない場合は、ほかの治療法への切り替えが検討されます。
薬物治療の長所は、外来で診断と同時に治療を開始できること、不可逆的な甲状腺機能低下症になることがほとんどないことです。一方、短所は、治療期間が長いことや、薬物の副作用が比較的多いこと、重篤な副作用が起こり得ること、寛解率が低く、服薬を中止する基準が明らかでないこと、再発が起こり得ることです。
◆バセドウ病の外科治療
以下のような場合は、外科治療を考慮します。外科治療は早期にバセドウ病を治癒できますが、短所もあります。
◆バセドウ病のアイソトープ治療
放射性ヨウ素の入ったカプセルを服用する治療法です。多くの長所がある半面、放射線を使用しますので、妊婦や妊娠の可能性がある女性には投与できません。重症バセドウ病眼症の方や、18歳以下の患者さまには慎重投与が必要です。
洛和会音羽病院では、2015年より、バセドウ病に対する131I内用療法を実施しています。
◆妊娠・出産とバセドウ病
バセドウ病の患者さまでも、抗甲状腺薬で適切に治療を行えば、妊娠・出産は十分可能です。ただし、胎児への影響(催奇性)を考えて、服用する薬の種類や用量ついては、医療者の指示に従ってください。また、妊婦さん自身への影響については、適切な治療が行われずに母体の甲状腺機能亢進状態が持続すると、妊娠高血圧症候群や甲状腺クリーゼ、流産・早産・死産のリスクが高くなります。妊娠中もバセドウ病の治療をしなければなりません。
薬物治療の胎児への影響に関する調査では、妊娠初期にメルカゾールを服用した妊婦さんから先天異常の赤ちゃんが生まれた例が報告されています。同じ調査で、チウラジール服用者には先天異常例は報告されていません。このため、妊婦さんに限っては、妊娠4〜7週はチウラジールが第1選択となります。
◆そのほかの甲状腺疾患
甲状腺機能低下症を来す代表的疾患である「橋本病」や、甲状腺にできる“しこり”(甲状腺結節)、甲状腺の炎症などがあります。原発性甲状腺機能低下症のほとんどは慢性甲状腺炎で、発症頻度は成人女性で約10人に1人と非常に高くなっています。治療にはホルモン製剤によるホルモン補充が行われます。
甲状腺のしこりの多くは、良性です。まれに甲状腺がんが見つかります。甲状腺がんの原因は、被ばくによる影響(体外照射や内部被ばく)や、ヨウ素の摂取量、遺伝的要因などが考えられています。診断は、触診や超音波検査、細胞診などで行います。日本人の甲状腺がんの約9割は乳頭がんですが、このがんは進行が遅く、予後は非常に良いです。微小なものは、手術をせずに、経過観察が選択される場合もあります。
◆おわりに
洛和会音羽病院の内分泌内科では、バセドウ病のアイソトープ治療をはじめ、患者さまに適した甲状腺疾患の診断と治療を行っています。甲状腺の疾患は広範囲で、高齢者の甲状腺機能低下症では認知症やうつ病と診断されることもあります。気になる症状がある場合は、内分泌内科までご相談ください。
バセドウ病の薬による治療では、第1選択としてメルカゾール(一般名チアマゾール)が推奨されています。チウラジールなどほかの薬と比べて最終的な治療効果に明らかな差はない一方、1日1回の服用で良いことや、重大な副作用が起こりにくいといった利点があるためです。副作用には、無顆粒球症や重症肝障害などがあり、発症の頻度は低いですが、起こってしまうと重症になるため、服薬を始める際は慎重に経過をみていく必要があります。副作用の8割方は服用開始3カ月以内に起きますので、そこを乗り切れば、薬を減らしたり、おおむね順調に治療が進められます。
薬物治療は、抗甲状腺薬1錠隔日服用で半年以上の間甲状腺機能が正常に保たれていれば、中止を検討して良いとされ、逆に、抗甲状腺薬を1.5〜2年続けた時点で休薬できる見通しが立たない場合は、ほかの治療法への切り替えが検討されます。
薬物治療の長所は、外来で診断と同時に治療を開始できること、不可逆的な甲状腺機能低下症になることがほとんどないことです。一方、短所は、治療期間が長いことや、薬物の副作用が比較的多いこと、重篤な副作用が起こり得ること、寛解率が低く、服薬を中止する基準が明らかでないこと、再発が起こり得ることです。
◆バセドウ病の外科治療
以下のような場合は、外科治療を考慮します。外科治療は早期にバセドウ病を治癒できますが、短所もあります。
◆バセドウ病のアイソトープ治療
放射性ヨウ素の入ったカプセルを服用する治療法です。多くの長所がある半面、放射線を使用しますので、妊婦や妊娠の可能性がある女性には投与できません。重症バセドウ病眼症の方や、18歳以下の患者さまには慎重投与が必要です。
洛和会音羽病院では、2015年より、バセドウ病に対する131I内用療法を実施しています。
◆妊娠・出産とバセドウ病
バセドウ病の患者さまでも、抗甲状腺薬で適切に治療を行えば、妊娠・出産は十分可能です。ただし、胎児への影響(催奇性)を考えて、服用する薬の種類や用量ついては、医療者の指示に従ってください。また、妊婦さん自身への影響については、適切な治療が行われずに母体の甲状腺機能亢進状態が持続すると、妊娠高血圧症候群や甲状腺クリーゼ、流産・早産・死産のリスクが高くなります。妊娠中もバセドウ病の治療をしなければなりません。
薬物治療の胎児への影響に関する調査では、妊娠初期にメルカゾールを服用した妊婦さんから先天異常の赤ちゃんが生まれた例が報告されています。同じ調査で、チウラジール服用者には先天異常例は報告されていません。このため、妊婦さんに限っては、妊娠4〜7週はチウラジールが第1選択となります。
◆そのほかの甲状腺疾患
甲状腺機能低下症を来す代表的疾患である「橋本病」や、甲状腺にできる“しこり”(甲状腺結節)、甲状腺の炎症などがあります。原発性甲状腺機能低下症のほとんどは慢性甲状腺炎で、発症頻度は成人女性で約10人に1人と非常に高くなっています。治療にはホルモン製剤によるホルモン補充が行われます。
甲状腺のしこりの多くは、良性です。まれに甲状腺がんが見つかります。甲状腺がんの原因は、被ばくによる影響(体外照射や内部被ばく)や、ヨウ素の摂取量、遺伝的要因などが考えられています。診断は、触診や超音波検査、細胞診などで行います。日本人の甲状腺がんの約9割は乳頭がんですが、このがんは進行が遅く、予後は非常に良いです。微小なものは、手術をせずに、経過観察が選択される場合もあります。
◆おわりに
洛和会音羽病院の内分泌内科では、バセドウ病のアイソトープ治療をはじめ、患者さまに適した甲状腺疾患の診断と治療を行っています。甲状腺の疾患は広範囲で、高齢者の甲状腺機能低下症では認知症やうつ病と診断されることもあります。気になる症状がある場合は、内分泌内科までご相談ください。