2012年04月11日

第92回らくわ健康教室「病院からの退院が不安なとき 〜医療相談員の役割〜」

3月30日に開かれたらくわ健康教室は、洛和会みささぎ病院 医療介護サービスセンター 副係長の岡田 理愛(おかだ りえ)が、退院に当たって患者さまやご家族がかかえる問題や不安を解決している“医療相談員”の役割について講演しました。岡田講師は「退院に不安を感じたら、小さなことでもお気軽に相談してください」と呼びかけました。


岡田講師の講演要旨は次のとおりです。

Okimg_58312医療相談員とは
入院での治療が終了し、「退院できます」と言われても、

 ・ リハビリテーション(以下リハビリ)を受けたけれど、以前のように歩けない
 ・ まひが残ってしまった
 ・ 認知症が進んでしまった
などの問題や、

 ・ 家の中に段差がたくさんあり、移動が不安
 ・ お風呂が深いので、入れるか不安
 ・ 病状の管理が不安

など、さまざまな不安が生じると思われます。
そのようなときに相談に応じる病院の職員が、医療相談員です。社会福祉士や、精神保健福祉士、看護師、事務職員などが、医療相談員として業務にあたっています。

退院相談の事例
退院相談を受けた医療相談員が、実際どのように対応していくか、事例をご紹介します。

Aさん(72歳、女性)の場合
Aさんは、転倒により右大腿骨を骨折して入院、人工骨頭の手術を受けました。リハビリ目的で、洛和会みささぎ病院へ転院され、その後、退院の許可が出ました。しかし、Aさんにはいろいろな不安があります。
以下は、Aさんの不安と、相談された医療相談員が提案した内容です。

  1. 「買い物に1人で行けるかしら」
    ⇒週2回、ヘルパーと一緒に買い物に行く。
  2. 「銭湯に行くのは危ないかしら」「リハビリを続けたいわ」
    ⇒週2回、デイケア(通所リハビリテーション)で、入浴とリハビリを行う。
  3. 「玄関の上がりかまちが高いので、家の出入りが大変」
    ⇒住宅改修を行う。(踏み台を設置して、段差を解消。また、上り下りを安全・楽に行えるよう、縦の手すりを設置)
  4. 「和式のトイレを使えるかしら」
    ⇒福祉用具の購入・レンタルを行う。(かぶせ便器を購入して、洋式に変更。また、設置型の手すりをレンタルする)

以上の相談内容を地域のケアマネジャーに報告し、担当を依頼。退院までにヘルパーやデイケア、福祉用具の準備をしてもらいました。
また、入院中のAさん、ケアマネジャー、福祉用具業者、工務店、病院のリハビリスタッフ、相談員などと一緒にご自宅に伺い、Aさんが使いやすい位置に手すりを取り付けられるようにしました。

Bさん(89歳、男性)の場合
Bさんは、長女夫婦と3人暮らしです。脳梗塞で入院し、点滴治療とリハビリを行った後、リハビリ継続目的で、洛和会みささぎ病院に転院されましたが、胃ろうを造設し、車いすの生活に。退院の許可が出ましたが、Bさんの娘さんは、介護ができるか心配です。
以下は、娘さんの不安と、医療相談員が提案・手配した内容です。

  1. 「入院前よりサービス量を増やして、介護を手伝ってもらえるでしょうか?」
    ⇒ケアマネジャーに状況を報告、介護保険の区分変更を依頼。結果、要介護4に認定され、介護量に応じた介護保険サービスを利用できることに。
  2. 「トイレの介助が不安・・・」
    ⇒1日2回、ヘルパーに来てもらい、おむつ交換をしてもらう。また、入院中に、負担の少ないおむつ交換の方法を、看護師から娘さんに伝えてもらう。
  3. 「デイサービスに行く体力がないけれど、お風呂はどうしよう」
    ⇒訪問入浴を週1回利用し、自宅でお風呂に入ってもらう。また、訪問看護に週1回来てもらい、体を拭いてもらう。
  4. 「胃ろうからの注入ができるかしら」
    ⇒入院中に、看護師に注入のしかたを教えてもらい、実際に練習してもらいました。また、訪問看護師が来る際に、体調の観察と、注入のしかたの確認をしてもらうことに。
  5. 「病状面の管理が心配」
    ⇒2週間に1回、往診を頼むことを提案。自宅近くの開業医の先生を紹介しました。

ほかにも医療相談員は、3カ月に1回、洛和会みささぎ病院に2週間の短期入院をしてもらい、ご家族の介護負担を減らしていただけるよう提案しました。退院前には、主治医、看護師、ケアマネジャー、訪問看護師、ヘルパー、訪問入浴スタッフ、福祉用具業者など、関係者が集まり、退院後の生活についてみんなで打ち合わせを行いました。

自宅への退院のほかに・・
介護施設や、療養型病院などへの移行について提案することもあります。

社会資源の1つとしての洛和会みささぎ病院

  • 慢性期病院(149床)
  • 医療処置が必要で、施設を利用できない方への対応が可能です。ただし、長期の入院は難しいです。

 洛和会みささぎ病院の特色

  • 常勤の神経内科医が、2人います。
  • 入院してリハビリをしていただけます。
     リハビリに関わるスタッフ: リハビリ科の医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士

退院に不安を感じたら
入院すると、健康状態の不安だけでなく、退院後の生活に対する不安など、さまざまな不安を抱えることがあります。また、社会制度は複雑で、どのように利用できるのか、わかりにくいこともあります。
そんなとき、医療相談員が、利用できる制度についてわかりやすくご説明し、良い解決方法がないか、一緒に考えさせていただきます。小さなことでも、遠慮なくご相談ください。


ほかのらくわ健康教室の記事はこちら⇒らくわ健康教室 講演録



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2012年03月29日

京都市立の全小学校・中学校に京都新聞朝刊を寄贈

洛和会ヘルスケアシステムは、4月から1年間、京都市立の全小学校・中学校に、京都新聞朝刊を寄贈します。
これは、「子どもたちのために未来へ・・・」をコーポレートスローガンに掲げる当会が、学校での教育に役立つよう、昨年から小学校へ寄贈しているもので、今年は小学校170校に加え、73の中学校にも寄贈します。
3月26日、京都市教育委員会での贈呈式で、京都市教育委員会 高桑三男 教育長に目録を手渡した理事長 矢野一郎は「デジタルの情報が溢れる今こそ、残っていく情報である新聞は重要です。新聞をきっかけに、子どもたちに世のなかへ興味を広げてほしい」と述べました。

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2012年03月23日

第89回らくわ健康教室「心房細動による脳梗塞の予防」

3月9日に開かれたらくわ健康教室は、洛和会音羽病院 高次脳機能障害センター 所長で、医師の猪野 正志(いの ただし)が、近年患者数が増えている「心房細動」の説明を中心に、脳梗塞などとの関係や、予防、治療法について講演。「心房細動そのものは、ただちに命を脅かすものではありませんが、重篤な脳梗塞の原因になることがあります。規則正しい生活習慣を心がけ、薬は適切な量を正確に服用し、定期的に検査を受けましょう」と話しました。


猪野講師の講演要旨は次のとおりです。

Okimg_43642「心房細動」という病気をご存じですか?
心臓は、左右の心房と心室の4つの部屋に分かれており、これらが連携して規則正しい拍動を繰り返すことで、全身に血液を送るポンプの役割をしています。

「心房細動」は不整脈の一種で、心房部分がけいれんするように震えて、規則正しい拍動ができなくなった状態のことを言います。高齢者に起こりやすい病気で、高齢社会を迎えた今、患者数は増え続けています。

心房細動の原因
心臓に病気のある人だけでなく、ストレスや不規則な生活習慣によっても起こります。また、加齢や、ほかの病気(高血圧、糖尿病など)の合併症など、さまざまな原因が考えられます。

心房細動の症状

  • 動悸(脈のバラバラ感)
  • 息切れ、呼吸困難
  • 疲労感
  • 胸の痛みや不快感
  • めまい、ふらつき

ただし、無症状のことが多く、定期健診の心電図検査などで初めて心房細動が見つかる場合もあります。

心房細動はなぜ怖いのでしょうか?
心房細動そのものは、ただちに命を脅かすものではありません。しかし、心房細動があると、心房内の血の流れが乱れたり、血液がうっ滞したりして、血栓(血のかたまり)ができやすくなります。
この血栓が心臓から飛び出し、脳の血管を詰まらせると、脳梗塞を起こします。
心臓にできた血栓が原因で起きる脳梗塞を「心原性脳塞栓症」といいますが、これは重症であることが多く、心房細動の患者さまは、脳を守ることが大切です。
脳卒中は、寝たきりになる最大の原因であり、要介護の最大の原因でもあります。また、一般的に、脳卒中患者さまの入院期間は長いため、医療費の高さにつながります。
確定診断された脳卒中のうち、約75%が脳梗塞であり、脳卒中の死因でも、脳梗塞の占める割合が高くなっています。脳梗塞のなかでも、心原性脳塞栓症は重症化しやすく、患者数も増加しています。

心房細動の治療法は?
心房細動の治療は、

  1. 心房細動以外の病気の治療や生活習慣の改善
  2. 脳梗塞の予防
  3. 心房細動そのものの治療

の3つに分けられます。

(1)薬を使わない特殊な治療

  • カテーテルアブレーション
    ・・・脚の付け根の太い血管からカテーテル(細長い管状の器具)を心臓まで通し、不整脈が起きないようにする内科的なカテーテル治療
  • 心臓ペースメーカー
    ・・・心臓に人工的な電気信号を送ることで、心臓の本来の拍動を促す医療機器

(2)抗不整脈薬による治療
心臓で起こっている細動を取り除き、心臓の心拍リズムをコントロールするものと、細動が起こったままの状態で、心拍数をコントロールするものがあります。

(3)抗凝固薬(血を固まりにくくする薬)による治療
血液を固まりにくくして、心臓などに血栓ができるのを抑え、脳梗塞を予防する薬です。
※主治医とよく相談し、指示された量・回数を厳格に守ってください。

心不全などの心臓病のある人や、高血圧の人、糖尿病の人、脳卒中の既往がある人、高齢(特に70歳以上)の人は、脳梗塞を起こしやすいので、薬での予防が必要です。

治療中の生活で気をつけることは?
心房細動はきちんと管理・治療を行えば、決して怖い病気ではありません。

  • 薬は、医師・薬剤師の指示に従って正しく服用し、しっかり継続する。
  • 定期的な検査・受診を欠かさない。
  • 規則正しい生活をし、高血圧、糖尿病などの生活習慣病に注意する。
  • 医師・栄養士と相談のうえ、バランスのとれた食事をし、自分に合った運動をする。
  • 過度な飲酒は避ける。
  • タバコをやめる。
  • 十分な睡眠をとり、疲労をためない。

気になることがあったら、必ず主治医に相談しましょう


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