3月30日に開かれたらくわ健康教室は、洛和会みささぎ病院 医療介護サービスセンター 副係長の岡田 理愛(おかだ りえ)が、退院に当たって患者さまやご家族がかかえる問題や不安を解決している“医療相談員”の役割について講演しました。岡田講師は「退院に不安を感じたら、小さなことでもお気軽に相談してください」と呼びかけました。
岡田講師の講演要旨は次のとおりです。医療相談員とは
入院での治療が終了し、「退院できます」と言われても、
・ リハビリテーション(以下リハビリ)を受けたけれど、以前のように歩けない
・ まひが残ってしまった
・ 認知症が進んでしまった
などの問題や、
・ 家の中に段差がたくさんあり、移動が不安
・ お風呂が深いので、入れるか不安
・ 病状の管理が不安
など、さまざまな不安が生じると思われます。
そのようなときに相談に応じる病院の職員が、医療相談員です。社会福祉士や、精神保健福祉士、看護師、事務職員などが、医療相談員として業務にあたっています。退院相談の事例
退院相談を受けた医療相談員が、実際どのように対応していくか、事例をご紹介します。
Aさん(72歳、女性)の場合
Aさんは、転倒により右大腿骨を骨折して入院、人工骨頭の手術を受けました。リハビリ目的で、洛和会みささぎ病院へ転院され、その後、退院の許可が出ました。しかし、Aさんにはいろいろな不安があります。
以下は、Aさんの不安と、相談された医療相談員が提案した内容です。
- 「買い物に1人で行けるかしら」
⇒週2回、ヘルパーと一緒に買い物に行く。 - 「銭湯に行くのは危ないかしら」「リハビリを続けたいわ」
⇒週2回、デイケア(通所リハビリテーション)で、入浴とリハビリを行う。 - 「玄関の上がりかまちが高いので、家の出入りが大変」
⇒住宅改修を行う。(踏み台を設置して、段差を解消。また、上り下りを安全・楽に行えるよう、縦の手すりを設置) - 「和式のトイレを使えるかしら」
⇒福祉用具の購入・レンタルを行う。(かぶせ便器を購入して、洋式に変更。また、設置型の手すりをレンタルする)
以上の相談内容を地域のケアマネジャーに報告し、担当を依頼。退院までにヘルパーやデイケア、福祉用具の準備をしてもらいました。
また、入院中のAさん、ケアマネジャー、福祉用具業者、工務店、病院のリハビリスタッフ、相談員などと一緒にご自宅に伺い、Aさんが使いやすい位置に手すりを取り付けられるようにしました。
Bさん(89歳、男性)の場合
Bさんは、長女夫婦と3人暮らしです。脳梗塞で入院し、点滴治療とリハビリを行った後、リハビリ継続目的で、洛和会みささぎ病院に転院されましたが、胃ろうを造設し、車いすの生活に。退院の許可が出ましたが、Bさんの娘さんは、介護ができるか心配です。
以下は、娘さんの不安と、医療相談員が提案・手配した内容です。
- 「入院前よりサービス量を増やして、介護を手伝ってもらえるでしょうか?」
⇒ケアマネジャーに状況を報告、介護保険の区分変更を依頼。結果、要介護4に認定され、介護量に応じた介護保険サービスを利用できることに。 - 「トイレの介助が不安・・・」
⇒1日2回、ヘルパーに来てもらい、おむつ交換をしてもらう。また、入院中に、負担の少ないおむつ交換の方法を、看護師から娘さんに伝えてもらう。 - 「デイサービスに行く体力がないけれど、お風呂はどうしよう」
⇒訪問入浴を週1回利用し、自宅でお風呂に入ってもらう。また、訪問看護に週1回来てもらい、体を拭いてもらう。 - 「胃ろうからの注入ができるかしら」
⇒入院中に、看護師に注入のしかたを教えてもらい、実際に練習してもらいました。また、訪問看護師が来る際に、体調の観察と、注入のしかたの確認をしてもらうことに。 - 「病状面の管理が心配」
⇒2週間に1回、往診を頼むことを提案。自宅近くの開業医の先生を紹介しました。
ほかにも医療相談員は、3カ月に1回、洛和会みささぎ病院に2週間の短期入院をしてもらい、ご家族の介護負担を減らしていただけるよう提案しました。退院前には、主治医、看護師、ケアマネジャー、訪問看護師、ヘルパー、訪問入浴スタッフ、福祉用具業者など、関係者が集まり、退院後の生活についてみんなで打ち合わせを行いました。
自宅への退院のほかに・・・
介護施設や、療養型病院などへの移行について提案することもあります。
社会資源の1つとしての洛和会みささぎ病院
- 慢性期病院(149床)
- 医療処置が必要で、施設を利用できない方への対応が可能です。ただし、長期の入院は難しいです。
洛和会みささぎ病院の特色
- 常勤の神経内科医が、2人います。
- 入院してリハビリをしていただけます。
リハビリに関わるスタッフ: リハビリ科の医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士
退院に不安を感じたら
入院すると、健康状態の不安だけでなく、退院後の生活に対する不安など、さまざまな不安を抱えることがあります。また、社会制度は複雑で、どのように利用できるのか、わかりにくいこともあります。
そんなとき、医療相談員が、利用できる制度についてわかりやすくご説明し、良い解決方法がないか、一緒に考えさせていただきます。小さなことでも、遠慮なくご相談ください。