2015年02月25日

第204回らくわ健康教室【介護版】
「かかわり方が決め手!『認知症ケア』」

2014年8月9日開催のらくわ健康教室では、「かかわり方が決め手!『認知症ケア』」と題して、介護事業部 グループホーム事業 課長で介護福祉士・介護支援専門員の遠藤 英三子(えんどう えみこ)が講演しました。


概要は以下のとおりです。
2162.jpgはじめに
認知症を取り巻くケアの環境は、以前の「認知症を中心としたケア」から、「その人を中心としたケア」へ変わりました。認知症を問題視するのではなく、人として接すること(自由を保障する・物語に参加する・共感的に受け入れる)、できないことではなく、できることを見て支援する(寄り添って平等な関係を築く・本人のもっている力や本人の思いに気付く)ことが重要です。

認知症とは
認知症は、脳の後天的な病気です。年齢のせいや、自然な老化ではありません。物忘れは誰にでも起きますが、“健常な物忘れ”は体験の一部だけを忘れるのに対し、“認知症の物忘れ”は、体験の全てが抜け落ちます。このため、“健常な物忘れ”の場合は、体験のほかの記憶から物忘れした部分を思い出すことができるのに対し、認知症では体験全てを忘れているため、思い出すことが困難になり、物忘れを自覚できないことになります。

認知症には、以下の4つのタイプがあります。
※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。7.jpg

認知症に伴うこころとからだの変化
認知症は、もの忘れなどの中核症状があり、適切なケアが受けられないと妄想や徘徊といった行動・心理症状(BPSD)を引き起こします。
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<中核症状:記憶障害>
人間の記憶には、以下の3つの力があります。

  1. 記銘力(新しいことを覚えこむ力)
  2. 保持力(覚えたことを記憶のなかにとどめておく力)
  3. 想起力(あらためて過去の記憶を呼び起こす力)

認知症の人は、最近のこと・直前のことを記憶するのが難しい半面、昔のことはよく覚えていることが多いです。
直前のことを記憶することが難しいため、何度も同じことを聞くのも特徴です。「今何時?」「お金はどこ?」「食事はまだ?」「ここはどこ?」…といった具合です。

<中核症状:見当識障害>
見当識障害は、時間→場所→人の順番でわからなくなります。
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<中核症状:理解・判断力の低下>

  • 考えるスピードが遅くなる
    ⇒時間をかければ自分なりの結論に至ることができる。
  • 2つ以上のことが重なるとうまく処理できない
    ⇒一度に処理できる情報量が減る。必要な話はシンプルに表現することが大事。
  • 些細(ささい)な変化、いつもと違う出来事で混乱を来しやすくなる
    ⇒お葬式での不自然な行動や夫の入院で混乱してしまっていたことをきっかけに認知症が発覚する場合がある。予想外のことが起こったとき、補い守ってくれる人がいれば日常生活が継続できる。
  • 観念的な事柄と、現実的・具体的な事柄が結びつかない
    (例:高価な羽布団を何個も購入、ATMなどの前でまごつく、全自動洗濯機が使用できないなど)

<中核症状:実行機能障害>

  • 計画を立て案配することができなくなる
    (例:冷蔵庫に入っている油揚げを忘れて、また購入→夕方台所に立つと購入した油揚げを忘れて違う材料でみそ汁を作る。ご飯を炊き、同時進行でおかずを作ることができないなど)
  • 保たれている能力を活用する支援
    ⇒誰かが全体に目を配りつつ案配すれば、一つひとつの調理作業は上手にできる。「今日のおみそ汁は、大根と油揚げだよね」と一言手助けする人がいれば、その先は自分でできることがたくさんある。
<中核症状:そのほか>
その場の状況が読めない
(例:周囲の人が予測しない、思いがけない感情の反応を示す。認知症による記憶障害や見当識障害、理解・判断障害のため、周囲からの刺激や情報に対して正しい解釈ができなくなる。技術の進歩により日常使う電話やテレビなどの機器が昔とは様変わりしていることに対応できないことも)
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行動・心理症状
不安や焦燥(イライラ)にかられ、次のような症状を呈します。
  • うつ状態
  • 幻覚・妄想(周囲の人には見えていないものが見える。物を盗られたと思い込む)
  • 徘徊(家がわからなくなり動き回る)
  • 興奮・暴力(急に怒り出す)
  • せん妄(一時的に混乱して、そわそわしたり興奮して動き回る)
  • 介護拒否
  • 帰宅願望(自宅にいるのにも関わらず) 
  • 脅迫症状
  • 睡眠障害(睡眠リズムの乱れ)
  • 昼夜逆転(昼間はウトウトし、夕方以降活発になる)
  • 不潔行為(排便の処理などがわからなくなることがある)
  • 収集癖(物を持ち帰る)

認知症と生活環境
認知症の人をケアするには、環境面の配慮が大切です。
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認知症の人と接するために
認知症になったとしても、何もわからないわけでも、何もできないわけでもありません。その人を尊重し、理解しましょう。理解してくれる人、安心できる居場所が大切です。認知症になっても快(喜び)・不快(嫌なこと)の感情は残ります。

認知症の人への対応
以下のようなことが大切です。
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スタッフが心掛けていること
認知症の人への対応は、「相手を尊重する」「相手を敬う」「相手に感謝する」「認知症よりもその人自身を理解する」といった「人としての関わり」が大切です。そのためにスタッフが心掛けていることは、「ゆっくり」「一緒に」「楽しく」です。
スタッフが穏やかに優しい対応で、じっくり相手のペースに合わせること、一人ひとりのできることを理解すること、その人に合った活躍の場面を暮らしのなかでつくり、一緒に行うことを心掛けています。

認知症の相談先
下記のような場所で、相談を受け付けています。
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ほかのらくわ健康教室の記事はこちら⇒らくわ健康教室 講演録3

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2015年02月24日

第207回らくわ健康教室【介護版】「安心して退院できるように 〜医療相談員のしごとと新病院移転のお知らせ〜」

2014年9月4日開催のらくわ健康教室では、「安心して退院できるように 〜医療相談員のしごとと新病院移転のお知らせ〜」と題して、洛和会みささぎ病院 医療介護サービスセンター 係長で社会福祉士の伊達 豊(だて ゆたか)が講演しました。


概要は以下のとおりです。
2264.jpgはじめに
「医療相談員」という言葉には、なじみがない方も多いのではないでしょうか。医療相談員は病院のスタッフで、入院患者さまやご家族に、安心して退院していただくためのお役に立てるしごとです。本日は、そんな医療相談員の仕事についてお話しします。


医療相談員(医療ソーシャルワーカー)とは
医療相談員とは、「保健医療機関において、社会福祉の立場から患者さまやそのご家族が抱える経済的・心理的・社会的問題の解決、調整を援助し、社会復帰の促進を図る業務を行う」職員のことです(医療ソーシャルワーカー業務指針より)。医療機関によって、「相談員」「MSW(メディカル・ソーシャル・ワーカー)」「ソーシャルワーカー」など、さまざまな呼ばれ方をしています。
洛和会ヘルスケアシステムでは、患者さまの入院時から、担当の医療相談員が付いて、支援に当たります。

※以下の画像は全てクリックすると大きいサイズで見ることができます。
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ケアマネジャーとの違い
ケアマネジャーは、介護保険分野での専門職です。医療相談員は、介護だけでなく、社会福祉全般を対象にしています。高齢者、身体障がい者、精神障がい者、知的障がい者、児童など、それぞれの人が抱える介護・人権・療養・生活・経済・心理などのさまざまな問題を対象としています。

洛和会ヘルスケアシステムの医療相談員
当会には、現在約20人の医療相談員がいます。全員が社会福祉士の国家資格をもつ専門職です。急性期病院である洛和会丸太町病院洛和会音羽病院と、私の勤務する洛和会みささぎ病院(慢性期病院)など、各病院で働いています。

以下は、洛和会みささぎ病院の医療相談員の仕事内容です。ちなみに洛和会みささぎ病院は、医療的な管理が必要な慢性期の患者さまにリハビリテーション(以下、リハビリ)を行うなど、在宅復帰や転院に向けた治療や訓練を行っています。
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回復期リハビリテーション
洛和会みささぎ病院は、2015(平成27)年4月に新築移転し、洛和会音羽リハビリテーション病院となります。設備やリハビリのための環境も新しくなり、回復期リハビリにこれまで以上に力を入れる病院となります。

回復期リハビリテーション病棟
回復期リハビリテーション病棟とは、脳卒中や大腿骨頸部骨折などの疾患やけがによる急性期治療を終えてから、寝たきりの防止や家庭復帰を目的とした集中的なリハビリを行う病棟です。早期にリハビリを開始するほど、効果は高くなります。対象疾患は以下のとおりです。
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相談援助
社会福祉士の資格をもつ専門職が、入院中に生じる諸問題についてご相談に応じます。入院時から、患者さま一人ひとりに医療相談員が付き、担当させていただくことになります。
病気で入院された患者さまの不安やご希望をお聞きしながら、各種社会資源を活用し、院内の他職種だけでなく、院外のサービス機関、関係職種(ケアマネジャーなど)とも連携を図り、スムーズに在宅復帰できるよう支援していきます。

チームで行うリハビリと支援
医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療相談員などがチームで関わり、一人ひとりの患者さまの身体状況や生活環境に合わせたプログラムを作成し、リハビリを行います。理学療法士は主に歩行の、作業療法士は生活動作の、言語聴覚士は食べる機能や発声のためのリハビリにあたります。
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支援の例:Aさんの場合
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ご自宅に退院するために家

病院でのリハビリの結果Aさんは、屋内では伝い歩きができるまでに回復しましたが、一人で外出するには危険なレベルでした。
退院後のAさんの不安と生活の課題をご本人と支援スタッフで抽出した結果、

  • 一人でお風呂に入るのは怖い・不安
  • トイレ使用時の立ち上がりが心配
  • 玄関の上がりかまちが高い
  • 買い物ができるかが不安 

ということがわかりました。それを受けて、具体的に行った支援が以下のとおりです。

具体的に行った支援ひらめき

  • 入院中に介護保険を申請
    ⇒要介護1の認定がおりる。
  • 家屋評価
    …ご本人、当院スタッフ(リハビリ、医療相談員)、在宅サービス担当者(ケアマネジャーなど)がご自宅を訪問。実際に必要な生活動作を行い評価。
  • 入浴については、転倒してしまうリスクが高い。
    ⇒週2回デイケアを利用し、入浴とリハビリをすることにした。
  • トイレの立ち上がりが心配。家屋評価時でも不安定だった。
    ⇒福祉用具担当者にトイレ用の手すりを設置してもらうことにした。
  • 玄関の上がりかまちが高い。
    ⇒段差を低くして、手すりを付ければ安全に移動できそうだったので、福祉用具担当者に上がりかまち用の福祉用具(段差を低くすることができ、手すりのついているもの)を設置してもらった。
  • 買い物が一人でできるか心配。
    ⇒ヘルパーと一緒に買い物にいくことにした。

おわりに
医療相談員は、患者さまの必要に応じて、入院から退院、退院後も必要な医療・介護が継続でき、住み慣れた地域で安心して生活が送れるよう、支援してまいります。何でもお気軽にご相談ください。


質疑応答から
病院で回復期リハビリを受け、退院した後、自宅で引き続き病院からの訪問看護やリハビリを受けられますか?
病院のスタッフがそのままご自宅に伺うことはありませんが、ご希望に応じてサービス担当者や開業医の先生を紹介させていただきます。手配や調整は、病院で患者さまを担当した医療相談員が行います。

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2015年02月14日

第180回らくわ健康教室【介護版】
「地域密着型サービスって何? 〜今までと変わらない自分らしい生活を〜」

2014年2月7日開催のらくわ健康教室では、「地域密着型サービスって何? 〜今までと変わらない自分らしい生活を〜」と題して、介護支援部 地域連携課 課長の伊関 潤也(いせき じゅんや)が講演しました。


概要は以下のとおりです。

 
5116.jpgはじめに
「地域密着型サービス」という言葉を聞かれたことがありますか? 超高齢社会に入ったわが国で、高齢者の皆さまが地域で今までと変わらない暮らしを継続できるよう、国が進めている対策の1つです。
これからの高齢社会の行方を考えながら、地域密着型サービスの中身についてご説明します。

高齢人口が急増しています
65歳以上の高齢者は2015(平成27)年には約3,395万人になると推計されていますが、これが10年後の2025年には、約3,657万人に増える見込みです。このうち75歳以上は、2015年は1,646万人、2025年には2,179万人へと、500万人以上も増加します。
現在でも、「退院したいけれど、独居で介護が必要なため自宅へ帰れない」「老老介護で施設に入れない…」といった悩みをお持ちの高齢者が多いなかで、対策は急務です。

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域包括ケアシステム
地域包括ケアシステムとは、厚生労働省が、2025年をめどに確立をめざしている高齢者ケアのあり方です。高齢者が地域で今までと変わらず自分らしい生活が送れるように、医療や介護・予防・生活支援サービスなど、包括的な支援を行う体制です。その一環として、「地域密着型サービス」が位置づけられています。

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地域密着型サービス
地域密着型サービスとは、2006(平成18)年4月の介護保険制度改正で新導入された介護サービスです。できる限り住み慣れた地域で生活ができるように創設されたサービス体系です。介護サービスを利用できる対象者は「要支援」または「要介護1」以上です。身近なところでサービスが受けられるように、事業所が所在する市町村の被保険者だけがサービスを利用できます。地域の特性を生かしたサービスを市町村が主体となって提供します。地域密着型として、より目が届きやすい市町村が事業所の指定・指導・監督を行います。

地域密着型サービス創設の背景

  • 大規模集約型の在宅介護サービスや施設サービス中心の施策では、高齢者自身のニーズに対応できていなかった。
  • 介護保険者である市町村の役割が不明確。
  • サービスの質が悪い。
  • 明るく活力ある高齢化社会をめざす。
  • 地域でサービスをつくっていくこと。

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地域密着型サービスの種類・特徴
【グループホーム】
入所条件:

  1. 介護が必要な認知症と診断された方
  2. 要支援2または要介護1〜5の方
  3. 施設の位置する市町村の被保険者

グループホームの特徴は、1グループ(ユニット)9人定員の小規模人数で、家庭的でゆったりとした環境での生活を提供します。食事、洗濯などの家事を共同で行います。小規模で「なじみ」の環境ができ、少人数のため、きめ細やかな見守りやサービスが可能です。
利用料金は、要介護度や家賃、生活費(食費、水道光熱費など)、定員などにより変わりますが、洛和グループホームの場合、合計で月額約14万3千円〜23万6千円です。

【小規模多機能サービス】
高齢者が、地域での生活を維持することができるように「通い」「泊まり」「訪問」の3点サービスを組み合わせたサービスです。これまで別々の施設で受けていたサービスを一カ所で受けられるという利点があります。
小規模多機能を利用すると、担当が小規模多機能のケアマネジャーに変更になり、登録制で、介護保険負担が定額となり、今まで利用していたサービスは終了となります。利用定員は1日15人です。
具体的なサービスの特徴として、「通い」は利用時間の幅が広いこと、「宿泊」はショートステイよりも利用しやすいこと、「訪問」は短時間の利用が可能なことが挙げられます。
利用料金は、要介護度や食事・宿泊の回数などによって変わります。例えば、要介護1の方が週5回の通い、週2回の泊まりをした場合、料金は約7万2千円になります。

【認知症対応型デイサービス】
一般のデイサービスのような集団(30〜40人)ではなく、定員12人の少人数制で、認知症の状態に応じて個別または少人数の機能訓練やレクリエーションを提供します。
1日(回)の利用料は、サービス料と食事代の合計で約1,300円〜2,000円で、入浴料は別途約50円かかります。

【夜間対応型訪問介護】
通常の介護サービスとは異なり、深夜(午後10時)〜早朝(午前6時)に何回か訪問してもらって介護が受けられるサービスです。

対象は、介護認定を受けている方で、地域密着型サービスに登録している方です。
利用料金は、基本夜間対応型訪問介護費が月額1,000円、定期巡回サービス費が1回につき381円、随時訪問介護サービスが1回につき580円です。

地域密着型特養・有料老人ホーム
小規模の定員(30人未満)で運営する、地域に密着した老人ホームです。食事、入浴、排泄、機能訓練など、日常生活の支援を行います。市町村が運営(委託も)する地域密着型介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム:以下「特養」)と、民間が運営する地域密着型特定施設(有料老人ホーム)があります。入居資格は、要介護1以上で、その地域に住民票がある方です。
利用料金は、地域密着型介護老人福祉施設(特養)が月額12〜15万円ぐらい(居住費、食費、介護費用など含め)ですが、世帯収入に応じて軽減制度があります。地域密着型特定施設(介護付き有料老人ホーム)が月額17〜23万円ぐらい(居住費、食費、介護費用など含め)です。

自治体のガイドブックも参考に
地域密着型サービスの利用料など詳細は、京都市が区役所や市内の高齢サポート(地域包括支援センター)などに置いている高齢者のためのサービスガイドブック「すこやか進行中!」でも確認できます。

洛和会ヘルスケアシステムの介護サービス
当会では、施設・居住系サービスだけでも、京都市内や府内、滋賀県内などに合計30カ所以上のグループホームのほか、小規模多機能(京都市内で5カ所)、特養や有料老人ホームの運営など、多くのサービスを行っています。関心のある方は以下にお問い合わせください。

電話お問い合わせ
 洛和会入居相談センター
 フリーダイヤル0120(045)507
 (担当:柏本・別府・小川・藤原・後藤)


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